思い出が詰まった家と涙の別れ。
でも、涙の先には笑顔があった。

住み慣れた家を離れる、思い出の詰まった家を手放す――。
それは、多くの人にとって悲しく辛い出来事だろう。
でも、その辛い決断が、幸せな結果に繋がることもある。

 

以前、子どもたちが巣立った家で、二人きりの生活を送る高齢のご夫婦がいた。
お二人は老後資金の不安から、当社にリースバックの査定依頼を申し込んできたのだ。

リースバックとは自宅を売って現金化し、
その後は賃貸契約を結び、家賃を支払うことで同じ家に住み続けることができるサービスだ。

リースバックは愛着のある家から離れたくない、
住み慣れた家で最期を迎えたいという
高齢者の方に人気のあるサービスで、そのご夫婦も同じ考えだった。

それは、ただ住み慣れた家だからという理由ではなく
その家には子どもたちと過ごした家族の思い出がたくさん詰まっていたからだ。

だが、その家は風呂が2階にあるなど、
高齢の夫婦にとって決して住みやすい家には見えなかった。

特に奥様は足を悪くされており、
これからさらに日常生活が大変になっていくことが想像できたのだ。

思い出の詰まった家から離れたくないという
気持ちを尊重しつつも、
僕は思い切ってご自宅を売却して、
もっと住みやすい賃貸住宅へ転居してはどうかと提案した。

これはご夫婦の意向には反する提案であり最初は二人ともその提案に難色を示された。
きっとリースバックを提案していれば、すぐに話はまとまっただろう。
だが、お二人のことを真剣に考えると、
どうしても僕にはリースバックをすすめることができなかった。

僕は条件の良いバリアフリーの賃貸アパートを調べあげ、「引越しが大変だから」というお二人に
すべてサポートしてくれる引越しサービスもご紹介した。

ご夫婦は迷いながらも家を売却し、引越しすることを決意。
契約の日、奥様は涙を流しており、その涙を見て僕も胸が痛んだ。

でもお二人はその後、
バリアフリーの賃貸アパートで新しい生活を始め、
今では住み心地の良い家で幸せな日々を送っている。

気持ちを整理するのに少し時間はかかったが、
引越しして本当に良かったと思ってくれているようだ。

たとえ思い出の詰まった家を手放したとしても
家族の思い出そのものは決してなくならない。

お客様以上にお客様のことを真剣に考えれば
きっとお客様が想像しなかった幸せを届けることができる――
僕たちの仕事はそんな仕事なのだと思う。

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